ファッショナブルな世界を持続させるステラ・マッカートニー、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションで語る

ファッショナブルな世界を持続させる

「レディは後戻りはしない」 by ステラ・マッカートニー

ステラ・マッカートニーが、成功を収めているデザイナーであるとともにベジタリアンである
ことや、レザーや毛皮を使用しないことをご存知の人は多いかもしれませんが、彼女の
日々の原動力がサステナビリティであることや、自分自身を伝道者とは考えていない
ことは知っていましたか?ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションの
センター・フォー・サステナブル・ファッション(FSF)にて毎年開催されるケリング・トークは
今年で第三回となり、マッカートニーは以下のように語りました。

冒頭の挨拶で、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(LCF)の学長フランシス・コーナーは、
「私たちはサステナビリティを切り離して考えていません。サステナビリティは、
デザインプロセスの一部です」と述べました。

デザイナーのステラ・マッカートニーも同じアプローチをとります。LCFのステージで、
『オブザーバー』『ガーディアン』の環境ジャーナリスト、ルーシー・シーゲルがステラに
インタビューしました。リサイクル素材とフェイクレザーから作られた、
ステラ マッカートニーの厚底プラットフォームシューズを履いたシーゲルは
マッカートニーに、その“自然体でクール”なスタイルはどこからきて、そのスタイルの
どういう点が持続可能性の原則に一致しているのか尋ねました。マッカートニーは、
「子供の頃、道徳性を身に着け、責任を持つように躾られたことがベースに
なっています。ずっと、スタイルのために道徳的なことを犠牲にするべきではないと
考えてきました」と答えました。

マッカートニーは、自分の名前を付けたファッションブランドを立ち上げたとき、
皮肉られたと打ち明けます。「ビジネスは持続可能なのだから取引はしないでしょ、
と言われました!」マッカートニーも指摘するように、ファッション、中でもファストファッションは
環境に最も有害な産業のひとつとされています。今では人々がそれをより意識するように
なってきました。

更なる意識の向上のために、マッカートニーのブランドと環境NPO「キャノピー」は、
この2年間、環境を破壊せずに調達できるビスコースの開発に取り組んできました。
マッカートニーは、持続不可能なビスコースを製造するために年間1億2千万本の木が
伐採されていると指摘します。マッカートニーの会社は、自分たちの手元のみならず、
全体的な改善を見つめ直すようになりました。マッカートニーは以下のように述べました。
「私たちは、私たちのサプライチェーンに愛を投資することにしたのです」(彼女はまた、
ウールについても同様のプロジェクトを実施したと述べました)

レッドレザー、イエローレザー

もちろん、これはブランドが行なう製造において、環境に配慮する唯一の要素でも、最も
重要な要素でもありません。「一番の持続可能な活動は、レザーを使用しないこと。
それによって、汚染の原因となるなめし工程をなくすことができます」彼女は、レザーの
ために10億の動物が殺されていること、また、綿が“加工されること”によって、
発がん性が極めて高い製品のひとつとなっていることも付け加えました。
そういった事情を踏まえ、マッカートニーのブランドは誇りをもって、漁網などから
ポリエステルをリサイクルしています。

トランプ氏の他に気になって眠れないことはありますか、とシーゲルが尋ねると、
「世界の温室効果ガスの18%を占める肉の消費が心配です。でも、世界中の人を
ベジタリアンにするつもりはありません」と静かに答えました。単純に、世界中の人々や
組織が参加している彼女の『ミート・フリー・マンデー(肉なしの月曜日)』キャンペーンの
ように、人々の意識を高め、状況を改善したいという考えなのです。
「(ステラ マッカートニーの製品を)米国への輸入する際の税金は、レザー製品と
比較すると30%も高い税金がかけられます。これは逆であるべきです!」

彼女は、自分のキャンペーンの実現性と取り組み方について現実的に考えて
います。「私も人間ですから完璧ではありません。お説教はしたくありません。
むしろ、風力がより環境に優しいことを知っていましたか?といったような
アプローチをしていきます」

また、この業界は浪費が激しいと言います。そして、「ファッション業界はとても
時代遅れです。もっとやり方を変えていかなければ。革新と技術が必要なのです」
と語ります。これが理由で、自分がファッションデザイナーであると名乗ることを決まり悪く
感じていたと言います。では、現在彼女は自分をどのように表現しているでしょうか。
「よくわからないけれど、母親とか妻かしら…」けれどもこれは、彼女がデザインに
携わることをすぐにでもやめるというわけではありません。ビジネスは“毎年二桁成長”を
遂げており、好調に推移しています。

ふわふわの動物

マッカートニーの関心は、環境への影響を減らすこと。「何かを作ると、同時に
跡が残ります。例えば、再生材を使用することなどで、私はそれを削減したいのです」
その認識がより広がることを望むマッカートニー。「持続可能な素材や工程をもっと
採用することで、より多くのビジネスが私たちに協力してくれることを望みます」

最新の2017年春夏、ステラ マッカートニーコレクションのサステナビリティの
実現度はどれくらいでしょうか。レディースウェアは53%、メンズウェアは45%という
結果が出ています。「この結果には満足しています」

ブランドの環境損益計算書は、どのような役割を果たしているでしょうか。マッカートニーは
次のように説明しています。「これはビジネスの追跡方法です。環境損益計算書によると、
私たちのブランドはケリングが保有する急成長ビジネスのひとつであるにもかかわらず、
環境への負荷を減らしていっています」マッカートニーは、彼女のアプローチをケリングに
取り入れる必要がありました。「最終的に埋め立て処分される“くすんだオートミール色の”
コットンの服をデザインすることにどんな意味があるでしょうか?」

同様に、“フェイクファー”もフェイクであることの表示を躊躇するほど改善されました。
「だから、毛皮を購入する必要もなく、動物を殺す必要もありません」ケリングのおかげで、
持続可能性の課題に意欲的に取り組めたと言っています。また、一番大切に
していることとして、「サステナビリティは、最も心躍ることです。胸がときめき目が覚めます。
祝福を感じます」と答えました。

殺戮をさせない

毎日の生活の中で持続可能を目指すために何ができるでしょうか。「意識すること」が
その答えです。「質問をする、手紙を書く。例えば、なぜこの時計はアマゾンでたったの
3ポンド(430円)なのでしょうか?とね」彼女は買い物についても同様のアドバイスをします。
「私たちは食べ物に触ります」ですから、洋服についても同じであるべきです。彼女は、
洋服が何から作られているか詳しく書いてあるラベルを見るように訴えます。
「ファッションは、文字通り、殺戮を伴うのです!」

最も影響を与えた人物は誰でしょうか。「父と母です。私が育ったのは有機農場で、
毛糸のために羊を飼っていました。羊を食べたりせず、年を取るまで育てました。
徹底した暮らしが、私に力を与えてくれました」マッカートニーは、
『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』などのドキュメンタリーや
『Clean by Design』などの番組にも影響を受けています。そして、使用する水の量を
減らすと、多くの場合エネルギーの消費が少なくなり、「お金が節約できる」とも
教えてくれました。

マッカートニーは、常に新しい持続可能な素材や工程に目を配っています。でも
その情報について尋ねると、「秘密です」と答え、「キノコのレザーなんてどうでしょう?」
と付け加えました。 ケリング・アワード・フォー・サステナブル・ファッション・プロジェクトの
ひとつについても言及しています。400もの応募者の中から、
ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションの5名の学生が受賞者に選ばれました。受賞者には
奨学金が授与され、今年参加したステラ マッカートニーとブリオーニの2つブランドの
インターンシップに参加するチャンスが与えられます。

生きる、生かす

カリフォルニア州のイレーネ-マリエ・シーリグは、革新的なキノコの皮を使った
アマドゥプロジェクトにより、ステラ マッカートニー・アワードを受賞しました。これは、
再生可能で、生分解性があり、レザーの代わりになり得る植物性の素材です。シーリグは、
ラグジュアリーファッションの素材として美しさと耐久性の両方のテストを行っています。
「このプロジェクトによって、芸術と科学が交わるところに革新を起こし、社会と環境に
前向きで永続的な実績を残すことができる、という私の信念を確認することができました」
と、マッカートニーは言います。

他にも、アグラジ・ジャインの、カイコを育て、生地を作る前に繭から出す「平和のシルク」や、
アナ・パサリックの、マスターバッチ溶液を染めることによって大量の水を節約し、
合成染色に伴う人間へのリスクを回避することができる「無着色のカラー」、また、
エリーゼ・コムリーの有機栽培のたばこ工場で染めたディナージャケットをデザインする
提案や、イシャール・ブラーボ・トムボリーの、女性ならではの視点を活用した、国連の
目標とケリングの社会的目標に関して企業の社会的影響を測定・改善するための
ツールなどのプロジェクトも賞を受賞しています。 最後に、レザーを使用する別の
ブランドでアートディレクターを務める自分の姿を想像できますか、という質問に、
マッカートニーはこう答えました。

「いいえ、レディは後戻りはしません!」