ケリング・グループ

危機的な状況下でも 事業を継続し、将来へ備える

- ジャン=フランソワ・パルー、グループ・マネージング・ディレクター

- ジャン=フランソワ・パルー、副CEO

2020年は、前例のない課題の数々に直面した一年でした。新型コロナウイルスの世界的流行に直面した私たちは、ブティックやその他の拠点で厳格な健康対策を導入し、従業員とお客様を守ることを最優先に動きました。最初に中国で実施した保護措置は、ウイルスが拡がり続ける中、徐々に他の地域にも拡大されていきました。

 

私たちは同時に、長期的な戦略やビジョン、価値観を犠牲にすることなく、事業の継続性を確保し、当社のビジネスにより直接的・間接的に支えられている何万人もの雇用を守らなければなりませんでしたが、結果としてはバリューチェーン全体で事業活動を維持することができました。

 

2020年3月初旬に、欧州でロックダウンが始まると、ミラノとパリのファッションウィークがまず中止になりました。物理的なショールームは使用できなくなり、バイヤーにコレクションを見せるための代替手段が必要になりました。過去の経験を生かし、グループのITチームとイノベーションチームは、ブランドと協力しバーチャルショールームを実現しました。この取り組みは非常に成功し目標を達成したため、現在も継続しています。

 

また、2020年秋冬コレクションの生産段階に入る際も、私たちは企業の敏捷性と対応力を存分に発揮しました。すべてのチームが現場で作業することができず、特にブランドのワークショップが多くあるイタリアでは、必要な活動に優先順位をつけ、ワークショップを再編成し、安全な環境でコレクションのプロトタイプを製作しました。
 

 

わずか数週間で導入されたソリューション

ブティックの閉鎖は、新たな課題をもたらしました。従業員の安全を確保しつつ、ブランドの事業活動を継続することが不可欠でした。

 

販売員がお客様とのつながりを保てるよう、遠隔地での販売を可能にするソリューションを、わずか数週間で提供しました。また、海外からの観光客がほとんどいなくなったことを受けて、ブランドでは高度な顧客管理システムやCRMシステムを活用して地域のお客様との関係を強化しました。いずれの場合も、すでに進行していた開発を活用し、その効果を迅速に確認することができました。ブティックのお客様と観光客の両方が直面した制約に基づいて、年間を通じて、異なる市場や流通チャネルに在庫を柔軟に再配置するなどの対応を行いました。近年物流能力向上を目指したプロジェクトが進行していたため、こうした効率化が実現できました。

 

また、これらの開発を行ったことにより、デジタル技術やイノベーションへの投資を継続し、新しいソリューションや新しいビジネスモデルを模索することで、将来の市場トレンドを先取りしたいという思いを改めて強くしました。

 

2020年のケリングの回復力は、グループに携わるすべての人が、対応力、俊敏性、創造性、自己管理能力で際立っていたことに基づいています。また、数年前から進行中の戦略プロジェクトの数々も、ケリングの柔軟な回復力を高めていると思います。

The new global logistics platform in Trecate, Italy.

The Houses used innovative approaches to maintain their relationships with clients. Pictured here, the Gucci 9 hub.

Balenciaga boutique in Rome.

Boucheron boutique in Beijing.

Alexander McQueen boutique in London.

Pomellato boutique in Shanghai.

Giant installation designed b Alexander McQueen boutique in London. y Bottega Veneta, based on its iconic gold chain, seen here in Chengdu, China.

継続的なプロジェクトがレジリエンスを高める 

今回の危機は、私たちがすでに認識し、戦略に組み込んでいたトレンドを加速させました。2020年のコロナ禍がきっかけで、お客様がオンラインでの購入にシフトしたことは間違いありませんが、私たちはそうした変化に元々対応しなければなりませんでした。2019年にEコマースプラットフォームを内製化したことで、翌年のロックダウンに迅速に対応することができ、サンローランとアレキサンダー・マックイーンのウェブサイトを内製プラットフォームに移行しました。新しい機能性、よりシームレスなデジタル体験、パフォーマンスの向上という形で、大きな効果がすぐに実感できました。

 

一方で、Eコマースには大きな物流能力が必要です。Eコマースの加速は、物流拠点の整備を決めた際に予想していました。2019年には、北米の物流センターを超近代的な新施設に移転しました。また昨年は、飽和状態にあった約20拠点のネットワークに代わり、イタリアに新たな物流ハブをオープンしました。この新設により、Eコマースを利用するお客様の期待に応えるために、商品の入手性の向上、配送時間の短縮、オムニチャネルサービスの提供といった複数の強みが生まれます。また、グループにとっては、商品1点あたりのコストを削減し、在庫管理の最適化を達成することができました。

 

こうした設備には一定の投資が必要でしたが、2020年には非常に有効であることが証明され当社の業績に直接寄与しました。今後2年間で、アジア太平洋地域と中東にさらなる物流センターの開設を予定しています。

 

 

当社の戦略的方向性を反映したトレンド

2020年に再認識されたことの一つとして、オンラインと店舗の両方において、イノベーションとカスタマー・エクスペリエンスの観点から、お客様からのニーズがますます高まっていることが挙げられます。

 

私たちは、究極のラグジュアリー体験を提供する方法として、実店舗のブティックが今後も主流であり続けると確信しています。ブランドはブティックにおいて、完全に自由に、自分たちの手でコントロールした方法でクリエイティブに表現することが可能です。これが、ブランドの店舗ネットワークを継続的に強化し、また同時にディストリビューターといった卸売チャネルの質を高くしている理由にもなっています。結果として近年、中国本土では存在感が高まり、特に2020年には活発化した市場での機会をうまくとらえ、欧州での減退を補うことができました。


一方、ブランドは、ポップアップストアを増やし、地域のお客様と常にコミュニケーションをとるため定期的に店内イベントを開催するなど、新しい接客スタイルに対応しました。

 

最後に、今回のコロナ危機は、ラグジュアリーの根底にあるもう一つの傾向を加速させました。それは、ブランドに対して顧客が意義や社会的責任をより強く求めているということです。当社はサステナビリティの先駆者として、またそのリーダーとしての地位に甘んじることはありません。2020年には、自社の目標や基準をさらに引き上げ、生物多様性を支援するための実践的な取り組みを開始しました。ケリングは創業以来、企業の役割はビジネスパフォーマンスの追求にとどまらない、という理念を掲げてきました。
昨年、パンデミック対策のために実施した寄付や支援も、この創業時の理念がベースにあります。

 

当社の強固なビジネスモデルにより、当社が真のコミットメントと明確な責任感を持った企業となることができます。グループとグループのブランドを大切にすることは、パートナーや地域社会、環境を大切にすることと同義です。私たちの戦略の方向性や投資、そしてラグジュアリー市場をとりまくトレンドがすべて完璧に一致しているという事実は、当社のビジネスモデルが健全性を証明しており、また将来に向けた自信へとつながっています。

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2020年の主な課題は何だったのか。私たちのチームはどのように対応し、いかなる成果をあげたのか。私たちが優先すること、そして目標は何か。ジャン=フランソワ・パルー(グループ・マネージング・ディレクター)、ベアトリス・ラザ(チーフ・ピープル・オフィサー)、グレゴリー・ブッテ(チーフ・クライアント兼デジタル・オフィサー)、マリー=クレール・ダヴー(チーフ・サステナビリティ・オフィサー兼渉外担当責任者)のインタビューをご覧ください。