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2026年2月03日
1月22日、歴史あるラエネックのケリング本社で、ヴォールト天井が印象的なギャラリー空間が、最先端スタートアップやケリングで意思決定層、そして先見性あるスピーカーたちが集う”イノベーションの拠点”へと姿を変えました。「ケリング・イノベーション・デー2026」です。
「カスタマージャーニーの高度化」というテーマのもとに開催されたこのイベントは、ケリングの各チームと、働き方を変革し得る人材やソリューション、アイデアをつなぐ”没入型の体験”となりました。ケリング傘下のブランドから集まった450名以上の参加者は、刺激的なトークやピッチに耳を傾け、厳選された16社のスタートアップと交流。ラグジュアリーブランドと顧客の関係性を再定義しうるテクノロジーを体感しました。
イベントは、ケリングCEOのルカ・デメオによるキーノート・スピーチで幕を開けました。
デメオはイノベーションを「戦略上不可欠な要素」として位置づけ、「イノベーションとは姿勢であり、特定の部門に限定されるものではなく、ブランドの運営全体に組み込まれるべきものだ」と強調しました。ラグジュアリーは歴史とクラフツマンシップを強みとしながらも、常に未来へと向けて更新され続けなければなりません。デジタル、リテール、サービスといった他業界の進化によって顧客の期待が変化する中、ラグジュアリー業界も、人間性と創造性の核を守りながら適応していく必要があります。
こうした背景のもと、デメオはグループとしての3つの優先分野を掲げました。「AIを活用したクリエイティビティと3Dイノベーション」「オペレーショナル・エクセレンス」「スマートなデジタル体験」です。いずれも、テクノロジーが最も迅速かつ有意義なインパクトを生み出せる領域です。
このビジョンは、一日を通して展開されたプログラム全体を貫く軸となりました。カンファレンスゾーン、スタートアップ・プレイグラウンド、体験エリアという3つの相互につながる空間では、トーク、スタートアップピッチ、ライブデモ、ネットワーキングが展開され、参加者はインスピレーションを得ながら、探求と交流の間を自由に行き来しました。
キーノート・スピーチに続き、参加者はこの日最初のピッチセッションに臨み、AIがどのようにブランドの顧客体験を、よりシームレスで感情的なものへと高められるのかを探りました。
GraceとIF Returnsは購入後のフェーズに焦点を当て、保証の強化や高度な返品管理によって、不安や不満が生じやすい顧客との接点を、ロイヤルティと成長につながる機会へと変えられることを示しました。一方、Kahoona、Listen、Airpanelは、オンライン上の顧客シグナルをリアルタイムで読み取り、それに基づき素早く対応するための手法を提示。顧客のセグメンテーションや大規模な「顧客の声」の把握、超リアルなAIコンシューマーを用いたテストを通じて、公開前の段階でコンテンツや顧客ジャーニーを洗練させるアプローチを紹介しました。
複数のセッションが一日を通して開かれ、スタートアップは5分間のテンポの良いプレゼンテーションと、それに続くライブQ&Aを実施しました。これにより、各ブランドが抱える具体的な課題に対して、これらのテクノロジーがどのように応えられるのかを巡り、即時的で実践的な対話が生まれました。
ピッチセッションの合間には、カンファレンスエリアで、個々のソリューションにとどまらない広い視点を提供するインスピレーショナルなトークが行われました。
最初のセッションでは、Googleのスピーカーが登壇し、ビジュアル検索ツールやエージェント型AIが、文脈・意図・利用シーンを理解することで、高い購買意欲を持つ顧客とブランドをつなぎ、オンライン上でもブティック並みのパーソナライゼーションを再現する方法を紹介しました。
こうしたトークはまた、イノベーションをどのように開発し、どのようにスケールさせていくかを考える機会にもなりました。2024年のケリング生成AIハッカソンから生まれたビジュアルマーチャンダイジングツール「ALIX」も紹介され、テクノロジーが店舗ディスプレイ制作に構造と効率性をもたらす可能性が示されました。
クロージングトークでは、全米小売業協会(NRF)カンファレンスで得られた知見を踏まえ、リテール、テクノロジー、ラグジュアリーを変革する大きな潮流の中に、これらの取り組みがどのように位置づけられるかが語られました。そこはまさに、ケリングが今後ますます存在感を発揮していく領域です。
ステージ上で提示された視点の余韻が残る中、参加者はスタートアップ・プレイグラウンドへ足を運びました。14社のスタートアップが示したソリューションを前に、各ブランドのチームは、それらを実際の顧客体験にどう組み込めるかを具体的に思い描き始めました。会場は活気に満ちていました。
AIと商品データを活用してECでのサイズ選びの不安を解消するMeasmerizeや、意図を言語化するだけでストーリー、画像、動画を生成できるAwenなどが紹介されました。
一方で、MarqvisionとGaudierが、表に出にくいオペレーション領域の効率化によって、表舞台での卓越した体験を支えるアプローチを提示しました。MarqvisionはAIによる模倣品コンテンツの大規模な監視・削除を行い、Gaudierは「Maestro」システムを通じて、照明やセンサー、インタラクティブディスプレイなどの店内デバイスを連携させ、体験の統合とそのパフォーマンス分析を可能にしています。
また、POWER.xyzは、単一のマスター3Dアセットから複数のビジュアルコマース用途を生み出すアプローチを紹介。クリエイティブ制作の効率化と、没入的で一貫性のあるショッピング体験を両立させる、3DとAIの可能性を提示しました。
コラボレーションを最大化するため、本イベントでは2回のスピードネットワーキングセッションと、各チームのニーズに合わせたカスタマイズ型スタートアップツアーが実施されました。同時に、体験エリアでは、参加者が顧客の視点に立ち、最新テクノロジーを実際に体験する機会が設けられました。
ALIXの実演に加え、世界初のAI搭載ネイルマシン「UMIA」による即時ロゴネイル体験も用意され、遊び心を交えながら、スケール可能な自動パーソナライゼーションの可能性が示されました。
さらにGoogleとSnapは、デジタルでの発見とフィジカルリテールをシームレスにつなぐ次世代のバーチャル体験を紹介。Googleは、高精細・リアルタイムのバーチャル試着を実現する「Nano Banana」および「Veo」を披露し、SnapはARグラス「Spectacles」とともに、ケリングのブランドが制作したAR体験を楽しめるインタラクティブなバニティミラーを展示しました。
一日の締めくくりに行われたネットワーキングセッションでは、参加者たちが共通の課題や今後のコラボレーションについて語り合い、会話は途切れることなく続きました。ケリング・イノベーション・デーは、イノベーションが“オープンであること”と“人と人との交流”から生まれることを、あらためて実感させる一日となりました。テクノロジーが大胆な変革を後押ししつつも、創造性、クラフツマンシップ、そして顧客体験を確実に支えるための土壌が、ここにしっかり築かれていたのです。