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2026年6月29日
1967年、ジュエリーがまだ特別な機会のためのものとされ、厳格な慣習のもとにあった時代に、ポメラート創業者ピノ・ラボリーニは、ジュエリーを「自由な表現」として捉え直しました。それから約60年。ポメラートは今もなお、ジュエリー業界において最も革新的なメゾンであり続けています。その歩みを紹介するのが、パリのパレ・ド・トーキョーで開催される展覧会「ポメラート ― 革新のジュエラー」です。過去のキャンペーン写真やアイコニックなコレクション、そして現代のクリエイションを通して、本展ではスタイル、クラフツマンシップ、カラー、イメージ、そして女性という、メゾンを象徴する5つの革新を紐解きます。
創業当初から、ラボリーニのビジョンは一貫していました。ジュエリーは大胆で、喜びにあふれ、身につける人の個性に寄り添うものであるべきだという考えです。それは、より自由と自立を求める新しい世代の女性のために、彼女たちに寄り添うようデザインされてきました。
それから数十年にわたり、ポメラートは既成概念に挑み続け、ジュエリーのデザインにとどまらず、女性が自らの意思で選ぶことで、ジュエリーが何を体現し得るのかを問い続けてきました。
“「ポメラートは、女性がより大きな自由や自立を求め、新たな意識が芽生え始めた変革の時代に誕生しました。そして同様に、ジュエリーにおいても革新的なビジョンを切り拓いてきました。それは、洗練され、センシュアルで、紛れもなく現代的な表現です」”
ミラノでチェーン制作の名門として知られる金細工職人の家系に生まれたラボリーニは、その伝統を背景に、チェーンを単なる機能的要素から、独自の創造表現へと昇華させました。
「Ricciolo」(1968年)、「Catena Spiga」(1987年)、「Intreccio」(1983年)、「Tre Ori」(1993年)、そして最初の「Gourmette」ブレスレット(1967年)に至るまで、チェーンは身体に寄り添う、しなやかな存在としてデザインされています。オリジナルスケッチやアーカイブ写真とともに展示されるこれらの作品は、そのシンプルな佇まいの背後にある卓越した技術とクラフツマンシップを際立たせています。首元に滑らかに沿うプレート、継ぎ目のない構造、留め具が目立たない彫刻的フォルムなど、あらゆる革新は単なる装飾性よりも快適な着け心地と流れるような動きを重視しています。
現代を象徴するコレクション「カテネ」(2021年)では、手作業で仕上げられたリンクによりなめらかな流動性を備え、一部のピースではポメラート特有のイレギュラーなパヴェセッティングによって、ゴールドが隙間なく敷き詰められたストーンの中に溶け込むかのように姿を消します。
展示空間を巡るなかで来場者は、希少性や価値だけではなく、色の奥行きや感覚、そして感情的な響きに満ちたジュエリーの世界に誘われます。これがポメラートの「フリージェム」という哲学です。従来の価値基準にとらわれることなく、既成概念を超えた美を切り拓いています。
この哲学は、大胆なカットやコントラストをもつ、ルベライト、ペリドット、アクアマリン、ラブラドライト、トパーズといった意外性のあるジェムストーン、そして色彩をいきいきとした表現へと高める革新的なセッティングに表れています。
「Mosaico」「Mora」「Rugiada」「Griffe」「Caramelle」といったアーカイブ作品では、爪留めは機能を超えてデザインの要素となり、カボションは背面から光をたっぷりと取り込み、パヴェはあえて不規則なリズムで配されています。
「Bisanzio」ではフラッシュセッティングによってストーンは従来の構造から解放され、「Lago」ではジェムが彫刻的なゴールドの中に浮かぶ光の雫のように映ります。
そして「ヌード」リング(2001年)では、特許を取得した非対称の57ファセットカットのジェムストーンが、爪のないセッティングによって指の上に浮かぶように配され、ピュアで色彩に満ちた輝きを放ちます。このデザインは時代とともに、多彩なサイズや色で展開され、ブランドを象徴するアイコンとなりました。
フォルムにおいても、ポメラートは伝統からサヴォアフェールを解き放ち、ジュエリーを身につける彫刻として捉えています。そこには、エレガントでありながら建築的、力強くも精緻という、ミラノならではの精神が息づいています。
「Spirale」の幾何学的イヤリング、「Gemelle」の波打つようなネックレス、「Tubolare」の平面的に肌に沿う構造など、フォルムは独自の表現を築いてきました。
「イコニカ」は丸みのあるボリュームでこの美意識を受け継ぎ、「Pentagoni」はスケールや角度が変化するセンシュアルなフォルムでそれを表現しています。「イコニカ」リングは、1970年代のゴールドバンドのアーカイブ作品を再解釈し、重ね付けや組み合わせを楽しめる魅惑的なオブジェへと昇華しました。
Gemelle necklace (1971)
これらの作品は、それぞれのクリエイションが生み出してきたイメージとともに展示され、ジュエリーと身につける人との親密な関係を際立たせます。
デザインと同様に、イメージもまた革新の手段となり得ることをいち早く見出し、ポメラートは、20世紀後半を代表する写真家たちにキャンペーン制作を託し、ジュエリー広告の領域において他に類を見ないビジュアルアーカイブを築き上げてきました。
その始まりは1971年の「Gemelle」キャンペーンにあります。ジャン・パオロ・バルビエリは、「Gemelle」チョーカーを緊密に構成されたダブルポートレートの中で捉え、静的なジュエリー広告の慣習を覆しました。
1980年代には、ヘルムート・ニュートンが強烈なコントラストのモノクロームでポメラートのチェーンやブレスレットを映画のワンシーンのように描き出し、キャンペーンを視覚的なステートメントとして提示しました
やがて視線はジュエリーそのものから女性へと移り、これらのキャンペーンは単にジュエリーを見せるのではなく、女性を主役として前面に押し出すようになります。たとえば1990年のハーブ・リッツによる作品では、古代彫像を想起させる粘土に覆われた身体に輝きを放つジュエリーが配され、両者は分かちがたいひとつの彫刻的存在として捉えられています。
パレ・ド・トーキョーで開催する本展において、こうしたイメージは単なるジュエリー広告を超え、それ自体が独立した芸術作品として位置づけられます。それはまた、キャンペーンが本来意図していた、単なるプロダクト写真をはるかに超える表現であったというポメラートのビジョンを改めて示すものでもあります。
1990年代には、ポメラートのビジュアルは人物表現へと大きく舵を切ります。親密で感情的なポートレートは、女性の強さと個性を鮮やかに描き出します。
スノードンの被写体に迫るフレーミング、ハビエル・バリョンラットによる反骨精神を宿した女性像、そしてジェラルディン・チャップリンやカトリーヌ・ドヌーヴを捉えたミシェル・コントのドキュメンタリー的ポートレートなどは、ジュエリーを身につけた女性が「どう見えるか」ではなく、「どのような存在であるか」に焦点が移ります。女性はミューズではなく、常に主体として描かれています。
この視点こそが、ポメラートのすべての革新を貫く軸となっています。ピノ・ラボリーニによる創業当時の信念から、2017年に立ち上げられたジェンダー平等とジェンダーに基づく暴力の撲滅を目指す「Pomellato For Women」に至るまで、そのすべては女性のために、そして女性とともに築かれてきました。
「ポメラート ― 革新のジュエラー」展が、ファッション、アート、思想が交差するパレ・ド・トーキョーを会場としていることは極めて象徴的であり、さらにメゾンの新作ハイジュエリーコレクション「ポメラート スティーレ・リベロ」と同時に発表されることもまた必然ともいえる位置づけです。
“『ポメラート スティーレ・リベロ』とは、ひとつの価値観です。直感のままに動き、異なる技術や職人技を大胆に掛け合わせていく自由の精神です。そこにあるのは、洗練され、解き放たれ、静かに心を揺さぶる知的な感性をまとったクリエイティビティです”
全65点からなる本コレクションは、ポメラートを特徴づけてきた色彩の豊かな表現、彫刻的なボリューム、革新的な技術、そして卓越したクラフツマンシップを体現しています。なかでも、「Audace」は、1972年のアーカイブに残るポメラートを象徴する「Gourmette」チェーンを再解釈し、パーツが連なる構造のローズゴールドにホワイトおよびブラウンダイヤモンドをあしらったデザインへと展開しています。
「Drops of Paraíba」では、21石のペアシェイプのパライバトルマリンが、ポメラート独自のセルティ・リーブルの洗練された表現によって、流れるように自由でイレギュラーにセッティングされています。
また、フランス人アーティスト、サラ・ブランとの協働により制作された「Arabesque」ネックレスでは、ローズゴールドに手作業で透かし細工が施され、レースのように精緻な構築美が生まれています。そこに18石のローズカットダイヤモンドと4,123石のブリリアントカットダイヤモンドが配され、繊細な輝きを放っています。
本展と新作ハイジュエリーコレクションは、新たな章の幕開けであると同時に、ひとつの確かな継続性を示しています。それは、約60年にわたりメゾンを導いてきたビジョンが今なお脈々と受け継がれていることを物語っています。すなわち、ジュエリーを自己表現として捉え、それを身につける女性が自ら選び取るという考え方です。このビジョンは、時代の変化を映し出し、同時にその変化を形づくってきました。
“「ポメラートにおいて、真の革新すべてが既成概念に挑む勇気から生まれ、それがもたらす自由の中で受け継がれています」 ”
Pomellato Stile libero, Attache necklace in the making (2026)