次世代のテーラーを育成する:ブリオーニ「ナザレノ・フォンティコリ・アルタ・サルトリア・スクール」

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    2025年3月10日

    次世代のテーラーを育成する:ブリオーニ「ナザレノ・フォンティコリ・アルタ・サルトリア・スクール」

    歴史ある技術を守る最良の方法――それは、次の世代へ受け継いでいくことです。イタリア・アブルッツォ州ペンネにあるブリオーニのテーラリングスクールの再開は、その好例と言えるでしょう。 

    真のクラフツマンシップとは、時間と技術の積み重ねによって生まれるものです。ブリオーニのスーツジャケット1着を仕立てるには、最大36時間を要し、4,600以上のステッチが施されます。イタリア中部アブルッツォ州ペンネのアトリエで生み出されるすべての製品は、1945年の創業以来受け継がれてきた伝統技術を駆使し、高度な技術を持つ職人たちの手によって丁寧に仕立てられています。 

    創業から約80年を経た今、ブリオーニはこの職人技を次世代へと確実に継承するため、具体的な取り組みを進めています。2024年9月、ブリオーニは「ナザレノ・フォンティコリ・アルタ・サルトリア・スクール」を再び開校しました。この学校は、ブリオーニの共同創業者である名匠ナザレノ・フォンティコリの名を冠しており、1985年に開校しましたが、2020年にはパンデミックの影響で一時閉鎖されていました。 

    本校は、ブリオーニのグローバルなテーラーたちのための社内アカデミーとして機能する一方で、ファッション業界全体におけるクリエイティブな職種への人材育成も担っています。その理念は今も変わることなく受け継がれています――次世代のテーラーを育成し、クラフツマンシップの継承と発展を図ること。そして、ラグジュアリー業界における熟練職人の不足という課題に応えることです。 

    最高の職人から学ぶ 

    2024年9月、ナザレノ・フォンティコリ・アルタ・サルトリア・スクールの第1期生となる16名が、2年間にわたる研修課程をスタートさせました。このスクールでは、合計2,600時間に及ぶフルタイムの研修が行われ、学生たちはブリオーニの革新的な高級テーラリング技術を、現役および引退した地元の熟練職人たちから直接学びます。

    スクールの使命は、伝統的な技術を次世代へと受け継ぎ、職人技を再び活性化させること、そしてブリオーニならではの手作業による品質を守り続けることにあります。そのため、学生たちはラグジュアリーなテーラリングの世界に深く没入し、他では得られない高度なスキルを身につけていきます。

    ブリオーニのクラフツマンシップへの情熱は、これだけにとどまりません。今年の16名の学生には、入学金の85%をカバーする奨学金が支給されており、最終試験に合格すれば、その支援は100%にまで引き上げられます。 

    こうした取り組みは、才能ある若者を育てるだけでなく、ナザレノ・フォンティコリの故郷であり、1959年にブリオーニが最初のアトリエを開いたアブルッツォ地方の地域活性化にもつながっています。伝統的なイタリアのものづくりを未来へと受け継いでいくこと――それこそが、ブリオーニのアイデンティティの核心なのです。 

     

     

    技術を受け継ぐということの重要性 

    現在、ラグジュアリー業界では熟練した職人の不足が深刻な課題となっており、新たな世代のテーラーを育成することがこれまで以上に重要になっています。2024年10月に開催されたナザレノ・フォンティコリ・アルタ・サルトリア・スクールの開校式では、イタリア国立ファッション協会会長であるカルロ・カパーサが「若い才能を育み、背中を押すことの重要性」について強く訴えました。彼は次のように語っています。「職人の育成に投資することは、世界に誇る“メイド・イン・イタリー”の高品質なものづくりを支える知識と技術を、次の世代へ確実に受け継いでいくために不可欠です」 

    同様の見解を示したのが、イタリアのラグジュアリーおよびクリエイティブ企業を代表する財団「アルタガンマ」の事務局長、ステファニア・ラッツァローニです。彼女は、製造業こそが“メイド・イン・イタリー”の「鼓動する心臓」であり、あらゆる手段を講じてでも守るべき存在だと語っています。さらに彼女は、次のような警鐘も鳴らしています。「今後5年間で、高級ブランドは合計27万6,000人の技術職・専門職を必要とし、そのうち7万5,000人はファッション業界に集中すると見込まれています。しかし、企業のおよそ半数が、その人材を確保するのに苦労することが予想されます」 

     

     

    「職人の育成に投資することは、知識と技術を次の世代へ受け継いでいくために不可欠です」 

    — カルロ・カパーサ(イタリア国立ファッション協会 会長)

    こうした問題意識は、ブリオーニの哲学とも深く共鳴しています。1945年の創業以来、ブリオーニは卓越したクラフツマンシップと緻密な技術へのこだわりを貫いてきました。その技術は、長年にわたり磨かれてきた伝統的な手法によって支えられており、それを継承できるのは、熟練の職人による丁寧な指導を受けた者だけです。スクールの再始動に合わせて、ブリオーニは「ブリオーニ財団」を正式に設立しました。この社会貢献活動を通じて、同社は職人の育成と地域の活性化を支援しています。具体的には、地元の学校との連携をはじめ、アブルッツォ・メディオ・アドリアティコ産業連盟におけるテーラー養成講座の実施、そしてローマのアカデミア・コスチューム・エ・モーダとの提携によるメンズウエアデザイン修士課程への支援などが含まれます。この修士課程では、ブリオーニのアトリエでの集中研修も組み込まれており、実践的な学びの場が提供されています。

    これらの取り組みは、芸術と職人技の垣根を越え、未来の才能を発掘しながら、長年にわたって受け継がれてきた伝統技術を守り続けることを目的としています。創業から80年を迎えた今もなお、ブリオーニの“サヴォアフェール(匠の技)”への情熱は、世代を超えて脈々と受け継がれているのです。 

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