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ケリング・グループ
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2025年9月22日
「ウーマン・イン・モーション」プログラム発足10周年を記念して、ケリングは映画業界におけるジェンダー平等に関する調査結果を発表しました。調査を行ったのは、インクルージョンを専門とする米国の教授・研究者であるステイシー・L・スミス博士です。
2015年、#MeToo運動が始まる2年以上前のことです。映画業界におけるジェンダー格差は顕著で、女性はスクリーン上でも舞台裏でも常に見えにくい存在とされていました。ケリングは、女性の才能に光を当て、業界における女性の表現や立場を検証するためのプログラムを立ち上げることを決意します。
カンヌ国際映画祭のパートナーとして、ケリングの「ウーマン・イン・モーション」は、映画業界における女性にスポットライトを当て、アワードの授与、トークイベント、ポッドキャストなどを通じて具体的な支援を提供しています。これらは、影響力のある人物や新進気鋭の才能に発信の場を与えるとともに、資金面での支援も行っています。
プラットフォームの創設から10年が経過し、業界の一部指標には改善が見られるものの、真の平等にはまだ道のりがあります。
南カリフォルニア大学の教授であり、アネンバーグ・インクルージョン・イニシアティブの創設者でもあるステイシー・L・スミス博士は、ケリングの依頼により、2015年から2024年までの映画業界におけるジェンダー平等の変化を調査しました。
調査では、6カ国における興行収入上位の映画の制作陣における女性の割合や、過去10年間の主要映画祭で女性監督がノミネートまたは受賞した割合に焦点を当てています。
“「2015年から2024年の間に、女性監督の割合は米国で2倍(2024年は16.2%)、イギリスでは4倍(32.3%)、フランスでは10%増加(25.9%)しました」”
前向きな兆しが見られる一方で、フランスでは過去2年間に女性監督の数が減少していることが、2025年4月に発表されたフランス国立映画センターによる映画制作に関する最新調査で明らかになりました。これまでにセザール賞の監督賞を受賞した女性は、トニー・マーシャル(『エステサロン/ヴィーナス・ビューティ』2000年)とジュスティーヌ・トリエ(『落下の解剖学』2024年)の2名のみです。
米国のアカデミー賞でも同様の状況が見られます。2025年に『サブスタンス』でノミネートされたコラリー・ファルジャを含め、女性監督のノミネートは96回の授賞式の中でわずか9回。受賞者はキャスリン・ビグロー、ジェーン・カンピオン、クロエ・ジャオの3名のみです。
幸いにも、業界の著名人たちが変化を促す行動を起こしています。2017年、ニコール・キッドマンは「18ヶ月ごとに女性監督と仕事をする」という誓いを立てました。以来、彼女は自身のプロダクション会社Blossom Filmsを通じて19人の女性監督と協働し、女性の才能を支援しています。
この取り組みは、2025年の第10回「ウーマン・イン・モーション」アワードでも称えられました。この賞は、毎年カンヌ国際映画祭の期間中に業界の影響力ある人物を表彰するものです。ニコール・キッドマンは、ジェーン・フォンダ、ジーナ・デイヴィス、スーザン・サランドン、イザベル・ユペール、パティ・ジェンキンス、コン・リー、サルマ・ハエック・ピノー、ヴィオラ・デイヴィス、ミシェル・ヨー、ドナ・ラングレーらの後に続く形で受賞しました。
ステイシー・L・スミス博士はこう話します。「私たちの調査では、カンヌ、ヴェネツィア、トロント、サンダンス、ベルリンといった主要映画祭における女性監督の割合を分析しました。現在では、選出作品のうち26.8%が女性監督によるもので、10年前と比べて8%増加しています。最近では、クロエ・ジャオ(『ノマドランド』2020年)、オドレイ・ディワン(『あのこと』2021年)、カルラ・シモン(『太陽と桃の歌』2022年)がそれぞれヴェネツィアとベルリンで主要な賞を受賞しています」
「ウーマン・イン・モーション」の主要な取り組みのひとつが、エマージング・タレント・アワードです。2018年、カルラ・シモンは初監督作品『悲しみに、こんにちは』で注目を集め、この賞と5万ユーロの助成金を受けました。この資金を活用して制作したのが、ベルリンで金熊賞を受賞した『太陽と桃の歌』です。
それから7年、スペイン出身の彼女は映画界の常連となり、2025年には3作目『Romería(原題)』がパルム・ドールにノミネートされました。過去10年間で、彼女を含む新進気鋭賞の受賞者たちは、世界各地の映画賞で72回のノミネート、38回の受賞を果たしています。
この流れは、2025年に初監督作品『Manas(原題)』で「ウーマン・イン・モーション」エマージング・タレント・アワードを受賞したブラジルの監督マリアンナ・ブレナンドにも期待が寄せられています。彼女は毎年の慣例に従って、前年の受賞者によって選出されました。
「女性の活躍に注目が集まるようになった背景には、さまざまな要因があります」とスミス博士は語ります。#MeToo運動とその後の証言(フランスではジュディット・ゴドレーシュやアデル・エネルなど)が、業界における性的虐待や暴力への認識を大きく変えました。これらの出来事は、業界関係者が自らの意識を見直すきっかけとなり、不平等や無意識の偏見、構造的な制約を明るみに出しました。「多くの国で、多様性やジェンダー平等を条件とした制作助成制度が導入され、女性が映画制作の重要なポジションに就く機会も増えています。例えば、2024年の『ウーマン・イン・モーション』アワード受賞者でありNBCユニバーサル・スタジオのトップであるドナ・ラングレーや、Netflixの最高コンテンツ責任者ベラ・バジャリアなどがその例です。これは好循環です。女性がリーダーシップを取ることで、女性監督や脚本家の機会が増え、複雑で多様な女性主人公の物語も増えていきます」とスミス博士は話します。
スミス博士とそのチーム(キャサリン・パイパー博士、W・マイケル・セイヤーズ)による調査では、2024年に主要な役柄のうち女性が演じた割合は54%となり、2015年比で22ポイント増加しました。これは歴史的な成果です。「インターネットと共に育ったZ世代にとって、インクルージョンと平等は根本的な価値観です。彼らは、自分たちを反映したコンテンツ、女性や多様性、さまざまな人生経験を描いた作品を求めています」とスミス博士は語ります。「しかし、セリフのある全役柄のうち女性が占める割合は32%にとどまっています。また、米国ではジェンダー平等が進んでいるように見えても、その多くは20〜40歳の白人女性に偏っているのが現状です。もし映画が社会を真に反映しているなら、アフリカ系アメリカ人女性は米国映画の女性主人公の少なくとも20%を占めるべきです」
「ウーマン・イン・モーション」のトークイベントやポッドキャストで繰り返し取り上げられているもう一つの課題が、年齢差別と女性の物質化です。セリフのある女性キャラクターのうち、4分の1に部分的なヌード描写があり、40歳以上のキャラクターはわずか4分の1にとどまっています。「メリル・ストリープ、ミシェル・ヨー(2023年『ウーマン・イン・モーション』アワード受賞)、デミ・ムーアは、まさに“森を隠す木”のような存在です」と、ステイシー・L・スミス博士は語ります。彼女はまた、ブロックバスター映画の監督に女性が少ない現状を憂いています。どの国でも、映画の予算が大きくなるほど、女性が監督を務める可能性は低くなる傾向があります。フランスでは、女性監督による映画の平均予算が男性監督の作品より39%も低いというデータもあります。「女性はお金を管理できない、リスクが高いと見なされているのです。これは現実に根拠のない心理的な障壁です」とスミス博士は指摘します。その証拠が、グレタ・ガーウィグ監督による『バービー』です。
この作品は、2023年の世界興行収入ランキングで第1位を記録しました。「報酬に関する盲点も存在します」とスミス博士は続けます。「制作のあらゆる段階で働く男女が、自身の契約内容を匿名で共有してくれれば、報酬格差に関する調査が可能になります。これは、いまだに語られることの少ない最後の大きなタブーのひとつです」こうした格差を乗り越えるためのキーワードが、シスターフッド(女性同士の連帯)です。リース・ウィザースプーンやケイト・ウィンスレットのように、女性俳優が制作に関わるケースが増えており、他の女性の物語をスクリーンに届けるため、女性監督や脚本家を支援する動きが広がっています。メンターシップ・プログラムも立ち上げられ、女性の声を社会に届けるための支援が進んでいます。
2023年、ステイシー・L・スミス博士は、ケイト・ブランシェットと彼女のプロデューサーであるココ・フランチーニとともに「ウーマン・イン・モーション」のトークに登壇しました。その後、3人は「Proof of Concept」という支援プログラムを立ち上げました。このプログラムは、女性、トランスジェンダー、ノンバイナリーの映画制作者を支援することを目的としています。制度の欠陥を認識し、声を上げ始めた女性たちは、今や具体的な行動を起こす段階に入っています。「ウーマン・イン・モーション」のような取り組みは、彼女たちの声を届けるためのプラットフォームであり、増幅装置として機能しています。スミス博士は、「ウーマン・イン・モーション」のトークイベント参加者の発言や、受賞者のスピーチ内容を分析し、過去10年間に業界で起きた変化を定量的・定性的に検証しました。
着実な進展が見られる一方で、2025年現在、映画業界における性的虐待や暴力への対抗と同様に、女性の才能への認知と支援は依然として不可欠な課題です。こうした現状を踏まえ、カンヌ国際映画祭とケリングは、パートナーシップの継続を決定しました。映画界における女性たちの声が、メディアや芸術の世界でこれからも響き続けていくために。現代のリーダーたちが、次世代の人々にインスピレーションを届けていくために。映画という“第七の芸術”が、スクリーンの内外で包摂的で健全な領域であり続けるために。